BitSummitについて

1月19日にインディーゲームの祭典、『BitSummit』の出展応募の締め切りが迫ってきてます。
主催として名前を入れてもらって、ひいこら言いながら運営を手伝ってる身としては、是非とも色んな人に出展してもらいたく、 最後の一押しになれば・・・、というコトでBitSummitに行って感じたコトを書いて見ます。

私が初めてBitSummitに参加したのは2014年のBitSummit 3rdのとき。
知り合いがわざわざ東京から出展側として参加してる、というので陣中見舞いがてら見に行きました。

人について

海外色豊か

先ず入り口で海外の人の多さにビビります。出展者のの3〜4割が海外勢です。
国内のゲーム開発会社に務める海外出身者も居れば、わざわざこのために新作ゲーム引っさげて来日してる人も居ます。
そのため、中で通訳が歩き回ったりしてます。
聞くところによると日本国内の知名度よりもアメリカ、カナダでの知名度が高い変なイベントになりつつあるようです。
実際カナダの違う業界の知り合いに聞いたら普通に知ってました。
出展者だけじゃなく、開発者と仲良くなろうとするスポンサーやディストリビュータも日本支社をすっ飛ばして海外から来てたりします。
去年もちょっとお手伝いをしたのですが、『打ち上げがあるので来なよ』と案内されたところに行くと、2フロア全部英語だけが入り乱れる、完全に異国の地の酒場を目の当たりにし、恐れをなして5秒で帰りました。

開発者率の異様な高さ

基本的に出展者はゲーム開発者です。しかもプロデューサとかの交渉メインの人じゃなく、ガチの開発者です。
会場を見れば一目瞭然。濃い現場の話が聞けます。
このあたりはOgaki Mini Maker FaireやYamaguchi Mini Maker Faireに近いのですが、全体的なクォリティはこの手のイベントの中では 非常に高い方だ、と言えます。
実際世界レベルで見てもインディーゲーム市場の発展は著しいらしく、普通に1ブース20万の出展料取ってるイベントも多いようです。

場所について

Q-gamesという特殊な会社

BitSummitは第一回からずっと京都で開催されています。
そもそもの理由は主催のQ-gamesが京都の会社だからなのですが、このQ-gameの特殊な文化と合わさり、今のBitSummitが形成されています。
Q-gamesの社長はディラン・カスバートといい、『ポリゴン?なにそれ』という時代にスターフォックスを作った伝説的なプログラマです。
AMeeTに良い記事があるので、それを見てもらうと良いかもしれません。
彼が京都を気に入り、独立したのちも京都に会社を興したことによって、海外のゲームエンジニアが日本で仕事をするためにQ-gamesにどんどん入るようになっています。
未だに社員の半分は海外の方らしい。
おのずとこの『京都』、『ゲーム』、『海外エンジニア』の混ざった土壌がだんだんとBitSummitを通じて京都に染み渡って来ています。

京都の特殊性

おそらくファミコンができるまで、Q-gamesができるまでは京都に『世界的にゲーム開発の聖地』である、という認識はなかったと思うし、今もほとんどの日本人にはないと思います。
でも、今、インディーゲームの業界においては京都は確実に『聖地』になってます。シリコンバレーとか目じゃないぐらい。知らんけど。
どれくらいやばいかというと続々と海外のゲームスタジオが京都に引っ越して来てます。
さらに朝から晩までゲーム情報を発信してるファミ通さんが『京都を開発拠点に選んだ理由』なんて京都移住計画さんみたいなタイトルで取材記事を上げてしまうレベルです。
さらにはドキュメンタリー映画まで制作され、挙句の果てにそれがルールを曲げてゲーム配信プラットフォーム最大手のSteamで配信されるぐらいです。
もはや祭りの様相を呈して来ています。

個人的な感触

僕の勤める1-10が所属しているインタラクティブ業界はFlashから始まり、色んなインタラクションのある、簡単で楽しいコンテンツを作って来ました。
しかし画面とマウスとキーボードだけで作られた体験を設計することに物足りなさを感じるようになり、リアルなイベントの空間全体を使ったコンテンツ制作、デジタル・インスタレーションの制作の仕事を多く扱うようになります。
そしてバーチャルながら、かなりの空間情報をプログラムによって表現可能なVRコンテンツにもこの業界は食いついてます。

一方でゲーム業界はVRの登場によって画面の中の体験設計からVR空間全体の設計をする必要に迫られて来ています。

今、なんだか全然違う系統で進んで来た技術者がVR(とUnityとUnreal Engine)によって繋がった感じになってる、と僕は感じてます。
面白いのはどちらの業界も体験こそが重要であり、仕様が絶対ではない、デザイン気質の高いエンジニアが多いこと。
なのでこの業界とインディーゲーム業界を合わせたら絶対なんか面白いことになる!、と(特に理由はないですが)確信してます。
なのでBitSummitは、作り手ドリブンのとんでもない化学反応が頻発する面白い場所になっていくでしょう。

是非是非出展と来場の方を検討してみてください。きっと面白いです。
今年の開催日は5月20日と5月21日。1年の中でもっとも観光客の少ないシーズンです。

bitsummit.org

2016年の振り返りと2017年の活動について

はじめまして。1→10driveという会社で技術をやってる森岡です。 部屋の大掃除もまだ終わってませんが、『脳みその大掃除もやっておこう』、ということで2016年の振り返りと2017年の行動指標を書いておこうかな、と思い、はてなブログをはじめてみました。 今後、技術的な記事はqiita、非技術的な記事ははてなブログにしようかな、と思ってます。

2016年の振り返り

2016年1月 秘密のやつ

いきなり言えない案件。無事納品。

2016年3月 IBM×SAO

IBMさまのプロモーション施策を企画し、コンテンツを制作しました。

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ソードアート・オンライン ザ・ビギニング Sponsored by IBM | Works - 1→10design, Inc.

1→10のエンジニア総出で制作した、と言っても過言ではないレベルだったので、ソフトウェア廻りはみんなに任せ、僕は比較的手薄なハードウェア廻り、センサ廻りのフォローアップを行いました。

2016年3月 京都水族館『桜といわし』

去年の年末に公開された冬向けのコンテンツ『雪とくらげ』に引き続き、春向けのコンテンツ『桜といわし』を制作しました。

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京都水族館 「桜といわし」 | Works - 1→10design, Inc.

予算をドカンと渡され、企画は勿論、それを実現するために協力会社をアサインしたりと、、本当の意味で『制作をまるっと』やりました。 また、1→10にしては珍しく、ユーザリアクティブではなく、あくまで空間を染め上げることに重点を置いた制作物となっています。

2016年4月 秘密のヤツ

シャープの非接触で心拍が計測できるマイクロ波モジュールを利用した企画、コンテンツを制作しました。 この時は最初の企画のフィジビリティチェックと技術ベースでの企画の調整、あとはセンサと連携するアプリの制作です。 このセンサ、中々良いのでみなさん使ってみてください。 FTDI経由でデータを平文で送ってくるので、ArduinoでSerial通信したことのある方なら誰でも利用できるかと思います。

www.sharp.co.jp

2016年4月 GUMPLAY

2014年4月に入社早々に話を受けた、初案件であるSUNSTARの新製品GUMPLAYがついに発売されました。 企画段階から製品化まで、丸2年かかりました。 体験型コンテンツだとするとありえない開発期間ですが、SUNSTARの新規事業だと考えると、それなりのスピード感だったのではないでしょうか。 あと、IoTっていうのがバズワードになってますが、これほど広くCを射程に収めた上で販売されたB2CのIoTサービスはまだ無いんじゃないのかな、と思います。

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SUNSTAR G•U•M PLAY | Works - 1→10design, Inc.

2016年5月 JINS MEME ZEN

JINS MEMEの新たなアプリ、『ZEN』を制作しました。

youtu.be

JINS MEME ZEN | Works - 1→10design, Inc.

こちらも相談はさらに1年以上前、Goが出たのは9カ月くらい前だったかと。 SUNSTAR、JINS MEME共に実制作、企画以外の時間が結構かかりました。このあたりは大所帯で動かなければならないIoT案件の難しいところであり、面白いところかな、と思います。 SIerってなったことないのですが、おそらくこんな感じなんでしょうね。 リアルタイムのビジュアライズシーンをほぼ素材なしのフルジェネレイティブコーディングで実装しました(一部OSのバグで画像連番の箇所がありますが・・・)。 JINS MEMEのアプリはライゾマティクスさんやグッドパッチさんなど、名だたる制作会社さんも担当されてますが、それに負けない良いビジュアルができたのでは・・・と思ってます。

2016年5月 ZIG SIM

1→10単独としては初のオリジナルアプリケーション、『ZIG SIM』をリリースしました。 案件を通して、センサを使った制作物のフィジビリティチェックが制作進行のボトルネックになることが多い事を感じたため、『各種センサをすぐ試せる、すぐ見れる』ことを目的に『スマートフォンWifiとLiPoとセンサ諸々が載ったArduino』と見立てて利用できるアプリケーションを開発しました。 これが初Swift案件です。ソケット通信やOSCのライブラリを制作し、『これで今後楽ができる!』と思ってたのですが、Swift3の破壊的変更で『Objective-Cで書いておけば良かった・・・』と激しく後悔しました。 アプリ自体は制作系のエンジニアには好評みたいです。 TouchDesigner開発者のBenさんにもワークショップでちらほら取り上げてもらったりしてます。 ログを見てると突然海外からのダウンロード数が跳ね上がってたりしてびっくりします。 サイトのほうは色々と情報が追い付いてないのでそのうち更新します・・・。

zig-project.com

2016年5月 秘密のヤツ

プロダクトデザイン会社と連携してごにょごにょ。

2016年7月 BitSummit 4th

京都のインディーゲームの祭典、BitSummitのお手伝いをさせていただきました。 日本ではあまりそういう印象は無いかもしれませんが、実は京都は海外で『インディーゲーム開発会社のシリコンバレー』という認識をされてます。 BitSummitというイベントはその中心で、出展者の3~4割が外国の方、スポンサードも日本法人じゃなくて海外の本社から直接取り付けてたりします。 3rdで初めてお邪魔して、その雰囲気に圧倒されたので、BitSummitのお話があったときは二つ返事で引き受けました。 4thではサードウェーブさんにスポンサードしていただいてANATOMeのブースを出したのですが、実は主催として参加していました。 あれやこれやあり、あまり主催としての貢献ができなかったので、今年は頑張りたいところ。 今年は5月に開催されます。 VRやインディーなゲーム開発会社のみなさん、是非出展を検討してみてください。

bitsummit.org

2016年7月 HOMEWORKS展

これは個人製作。ヒトのサイズの7セグを4つ作って、来場者をカウントしたり時刻を表示したりしました。 よく行く、もくもく会的勉強サークルである『インスタ部』と、デジタルインスタレーションを制作されているコミュニティとのグループ展です。 イケコウさんと展示物を制作しました。 が、兎に角時間が捻出できず企画がリソースを理由にころころ変わり、そして制作で徹夜しまくった挙句当日機材が燃えたりして1日目にライブビルディングする、という状態になりました(こんなんばっかやな・・・)。 教訓としては『高い!と思う前に時給換算してみろ。大体作るよりも買ったほうが安い』です。 イケコウさんが後日MTRL KYOTOさんで開催されたFab Meet Upにてその内容をプレゼンしたそうです。

mtrl.net

2016年8月 Android Experiments Object

Android Experiments ObjectというGoogle主催のアイディア + プロトタイピングに最終選考まで残りました。 monomのメンバと一緒に開発・制作を担当させてもらっています。

www.android.com

2016年9月 秘密のヤツ

言えないやつ。丸ひと月、クライアントと毎週2回顔を突き合わせて、企画とフィジビリティチェックだけをしてました。 しかもフィジビリティチェックが『今』じゃなくて『色んな技術者や研究者をアサインして1年やって実現可能かどうか』というもの。 非常に面白かったけど次のステップに繋がらなかったので、是非リベンジしたいところ。

2016年9月 『感情を伝える手紙』プロトタイプ

ペンの軌跡に他の情報タグを追加してみる、という試み。 脳波は非常に曖昧だけど、それを文字の軌跡と一緒に記録して、再生してみるとなんとも色々考えてしまう、技術としてはちょっと旬を過ぎてるけど結構『問いかけてる』プロトタイプになってるかと思います。

works.1-10.com

2016年9月 ZIG SIMワークショップ

ZIG SIMは手軽にワークショップができるので、一回やってみましょう!ということになり、1→10初のワークショップを開催。 人来ないかも・・・と思って開催したら応募はちゃんと満席になって良かった。

2016年10月 ボツその1

企画してモック作ったけどボツ。

2016年10月 ボツその2

すさまじいスケジュールで相談きて、光の速さでフィジビリティ取ったけどボツ。

2016年11月 Steam VR Tracking Training

アメリカのシアトルにて2泊3日のSteam VRのHTC VIVEコントローラ開発セミナを受講してきました。 HTC VIVEは約3m四方の空間内のトラッキングが可能なのが特徴のVRキット。 そのコントローラがセミナを受講するとライセンスフリーで開発・販売できるとのことで早速受講しに行ってきました。 HTC VIVEはそのトラッキングエリアの広さと精度の高さで色んなVRアミューズメント施設で採用されているんですが、 コントローラが大きい事、操作がアミューズメントパークの機材としては複雑な事がちょっとネガティブだったので渡りに船、という感じ。 向こうでは生野菜とか生ものが怖くてひたすらタコスを食ってました・・・。

2016年12月 Ogaki Mini Maker Faire

大垣のMini Maker Faireに出展し、ZIG SIMについて喋ってきました。 Maker Fairへの出展も1→10としては初。

ommf.iamas.ac.jp

2016年12月 まだ言えないヤツ

まだ言えないプロトタイプを納品してきました。 プロトタイプっていうか、『IoT開発ツール』的な感じです。

2016年12月 インスタレーションのつくりかた

これも個人活動。突発企画で年末にいきなりトークセッションを企画。 告知開始が開催の9日前という、『普通延期するやろ』っていう感じのスケジュールだったのですがすぐに席は満席になり、『立ち見でいいから見させて』という連絡がいっぱい来る始末。 ほとんど運営っぽいところはインスタ部の他のメンバに巻き取ってもらったのですが、それでも資料制作の時間をもうちょっと取りたかった。 が、イベント自体は非常に満足。

[mtrl.net

その他

相談は受けたが「あ、これ俺じゃないほうがいいな」と思って他の人をアサインして、立ち合いとMTG以外に工数割いてない仕事はここに乗っけてないです。 4~5本くらいはある筈。

2016年まとめ

  • GUMPLAYがついに発売!
  • ムラはあるがほぼ月1ぐらいで何かを出せてる
  • 言えないヤツがちらほらある
  • 企画から入れてる
  • IoTっていうかプロダクトが絡む仕事が多い
  • 個人製作でも仕事でも実装する時間が取れなくなってきた
  • フィジビリティチェックが一段難しいレイヤになってきてる、技術経営とかに近いかも
  • すげーMTGが増えた(2016年1月ぐらいまで平日でMTGが入ってない日がなかった)

2017年の活動について

自社開発する

別にB2Cのみで食べていこう、というわけではないです。 ただ、見ていただければ分かる通り、『秘密のヤツ』が結構あります。 実はこの『秘密のヤツ』、商品開発のためのプロトタイプだったりしてて、『WORKS公開OKだけどOKになるのは商品販売後(2年後)』みたいなのが結構多いんですね。 でもこれだと1→10みたいなリアルタイムの話題性をちゃんと担保したい会社だと厳しいワケです。 なので、ちょっと仕事のフローをちょっと変更することにしました。 以前を『話を聞く→作る→売る』だとすると、今年は『作る→話を持っていく→作りこむ→売る』という感じで動こうかと思ってます。 要するに先に作って、公開してから売りに行く、という形ですね。

社内・社外共に勉強会を開催する

この業界、極端にフルスタックなエンジニアを欲しがる上に、似たようなスキルセットを欲しがるのがソシャゲ業界だったりするので、万年深刻な人手不足です。 ただ、その割にあまりちゃんと『育成』をすることが(少なくとも自分の回りは)できてない気がするので、そちら方面に力を入れて行こうと思ってます。 また、これは学生とか転職を検討しているひとだけじゃなくて、メーカ内のエンジニアさん相手にも是非やってみたい、と思ってます(実は去年1回やってます)。 というのはエンジニアがどれだけ体験重視、企画重視に動けるかがメーカの生き残りにおいて重要だと思っていて、ここに関しては『1→10にお願い』してもなかなか解決しづらいところだからです。 メーカやサービスの会社さんで社内でセミナを開催して欲しい方、是非ご連絡ください。

もっと派手なアウトプットを!

IoTとかプロダクトをやってると作るものが地味なものが増えていきがちです。 特に今年の後半は地味なのが続いたので、今年はもうちょっと派手なアウトプットをやれるように頑張ります。

他社と連携

制作をまるっと受けたりするようになったので、施工、長期運用、機材の保証など、1→10でカバーできないぐらい仕事の範囲が広がってきています。 なので、色んな会社やエンジニアにお会いして連携方法を模索していくのもアウトプットに重要だな、と思ってます。

作業場をうまく使う

今年あまり個人活動できてなかったのですが、忙しいのもありつつ、家に居るとついつい他の事をしてしまう、というのがある気がしてます。 * 仕事→仕事場 * 個人活動→作業場 * プライベート→自宅 という感じに切り分けてもうちょっとやる気と効率を上げていきたいところ。

旅行行く

子供の頃に海外旅行に連れていかれまくったせいで旅行したい気持ちが20年近くゼロだった僕ですが、そろそろ旅行しても良いかな、と思っております。 去年のシアトルは全く観光できなかったし、ちゃんと旅行したいな、と。 英語ももうちょっと勉強したいところ。

あ、あと去年の夏ぐらいからこっそりやってるやつが今年の上半期から下半期にかけてドバーッと出てくる予定。 これは結構露出するんじゃないかな。

と、いうことで今年もよろしくお願いします。 あと水回りと作業場の掃除が残ってる・・・。